Sunday, January 20, 2008

For Example vol.4


トニー・クラッグ Tony Cragg
《無題/Untitled》
1972
椅子、木片

[実験の目的]
「分節(アーティキュレーション articulation)」とは何か? たとえば、原子や分子などミクロな単位の物質の構造と、事物のレベルにおける、機能を構成する分節(たとえば椅子の脚-座面-背もたれ)といった、異なる種類のアーティキュレーションを関係づけることはできないか。

[実験の仮説]
錯覚は感覚(知覚)の誤作動や例外、付随現象などではなく、その主要な目的であり、分節を再編する契機となる。

[実験の方法]
木製の椅子と、複数個のキューブ状の木片を材料とする。キューブを積み重ね、正面から見て椅子を囲むような(側面から見ると真ん中で分断するように)矩形の枠を作る。その際、観る側に対する、以下のエフェクトを念頭に組み立てること。
 1. 一見、矩形の枠のゲシュタルトが、椅子とは独立して、はっきりと単一のものとして見えること。つまり、椅子と木枠は別々の分節を持つように見せる。
 2. 木枠を組み立てる場合、四辺のコーナーが縦/横のどちらに属するのかが重要になる。ボードゲームの「オセロ」においてもコーナーが勝敗を分つが、建築用語では部材同士の接合部の位置関係を、まさしく〈勝ち・負け〉と呼ぶ。通常上方の部材の接合部は、重力を考慮して横勝ちで組まれる(ちなみにドナルド・ジャッド Donald Juddの箱も、耐久性と安定性を兼ね備えた、上方が横勝ち、下方が縦勝ちという方式で組まれている)。おそらくわれわれは、こうした用語を知らなくとも、矩形の木枠が自立しているのを見ただけで、それは横勝ちに組まれている(分節されている)ことを察知してしまっている。
 3. しかしこの木枠は、同サイズのキューブを複数並べ積み重ねるという操作だけでできている。これらのキューブは一切接着されていない。椅子と木枠との構成に見えたこの物体は、構造的には、椅子の座面に載った八つのキューブと、U字状に並べられた44個のキューブ(縦に18個積み上げ×2、横に8個並列)という、別の2種類の分節からなっていた。
*注意事項
 A. 縦に積み上げた18個のキューブ2列のうち、一方を腰掛けの側面部分にぴったりとつけて垂直にし、他方には少しの隙間を作って斜めに曲がるようにする。
 B. また、下方部の地面に近い箇所では、椅子の脚にキューブがすっぽり収まって見えるよう、両者の向きを平行に保つこと。

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