Wednesday, January 16, 2008

For Example vol.3


ロバート・マンゴールド Robert Mangold
《Distorted Circle within a Polygon(Yellow-Ochre)》
1972
キャンバスにアクリル、鉛筆
203×226cm

[実験の目的]
アリストテレスは、物質と空間とは一対の不可分なもので、同一現象の表裏であると捉えていた。空間は、物体の占めている体積(そしてその配置)によってのみ定義可能であり、物質とは別にそれ自体として独立した空間、広がりは存在しない。彼は空っぽで何もない空間という「真空」の観念を退け、宇宙は「充満(プリナム)」していると考えた(また運動がなければ、われわれは空間について問うことはできないとも述べている)。
ここでの空間とは、喩えるなら「容器と中身」の関係の「容器」にあたる、物質が存在するための、基底としての空間ではない。このように空間が存在しないと考えることには、どんな意義があるのか? 

[実験の仮説]
あらかじめある、容器としての空間を否定することは、絵画においては、キャンバス内部に描かれた形態とそれを規定する外枠(フレーム)という、構造的なヒエラルキー(階層)を疑うことに等しい。内形と外形との関係は、恣意的かつ因習(制度)的である(遠近や余白も当然フレーミングを前提としている)。
描かれた何らかの対象がいきいきして(まるで動きそうに)見えるというイリュージョンや、奥行きのイリュージョンではなく、内形と外形を不可分なものとして関係づけることで、フレームないし境界それ自体が変化するようなイリュージョンを組織することが可能なのではないか。

[実験の方法]
キャンバスの四角形の枠に一辺を加えた五角形の色面と、その内側に線描された楕円の形態のみを構成要素とする。画面から外に向かって膨張するかのような楕円の内形と、それを押さえつける外形が拮抗し、どちらの形態が先行してできたのかがわからないような相互関係を生じさせる。
1、塗りムラなどの効果を一切使わずにモノクロームな色面を作り、それを五角形にカットする。また内形の楕円も、同様の均質な線によって描く。こうした制限に対し、色は内的な圧力を強調するものを選択する(ただし塗りそのものは平坦に仕上げること)。
2、五角形の各辺の中心をいずれも楕円の線に内接させ、内形と外形の調和的な均衡状態を作る。逆に、楕円自体の膨張は、画面の中心から外れて起こるようにする。また、五角形の内角の一つを直角の近似値にし、それぞれの角度と辺の長さも不均等にする。このずれから、内側に描かれた楕円によって、外形の五角形が圧迫されて歪んでいるように見せる。

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1 Comments:

Blogger milkwoman said...

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5:35 AM

 

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