Tuesday, April 22, 2008

For Example vol.7


ジョン・バルダッサリ John Baldessari
《Horizontal Men》
1984
白黒写真、ボードに貼り付け
247×123.5cm

[実験の目的]
人物の体勢(対象の形態)によってしか、地面が位置づけられない状況を想定すること。

[実験の仮説]
存在することは所属することである。ある対象を認知するとき、われわれはそれが位置する空間もセットで捉えている。けれど一方で、死んだ者は位置を持たない。眠っている者の属する場は見えない。
少なくとも映像/画像においては、対象と背景、人物と地面の関係は絶対的ではない。地面は、フレーミングと人物の関係に規定される。先行する実験例として、例えばエドゥアール・マネ Edouard Manetの《死せる闘牛士/Le Torero Mort》(1864)、トリシャ・ブラウン Trisha Brownの《Primary Accumulation》(1972)などを参照すること。

[実験の方法]
素材の物質性は一切利用せずに、既存のイメージだけを使って物質的な抵抗感を作る。
複数の複製画像をコラージュする方針を採りつつ、構図上のバランスを優先するコンポジションや、異なるイメージ同士の衝突、文脈の組み換えである異化効果に留まらない編集操作を行なう。

1. 画像は地面に水平に横たわる人物像で、映画のスチール写真や報道写真をソースとする。死体、倒れている人物、寝ている人物、死体のふりをする人物、寝ているふりをする人物、と虚実を問わずに集める(ただし、すべて眼を閉じているか、顔が見えない角度であること)。
2. 収集した画像を、それぞれ(棺桶のなかにあるように)一人の全身がぴったり収まるよう矩形状にフレーミングしてカットする。各々のサイズの違いを調整して、同じ程度の大きさにする(縦は多少の差はあってもよいが、横はきっちり同じ長さにそろえること)。人物の背景はそのまま残し、個々の素材に対しては最小限の加工で済ませる。
3. コンポジションになるのを避けるため、これらを上から下に並べる「積み重ね」という、ごく単純なルールによって配置していく。類似した体勢の人物の反復によってできる連続性。下に向かうにしたがって徐々に長くなる縦の幅。これが観る者の視線を誘導する。
4. 配置の際は、各々の身体の体勢と顔の向き、そしてカメラ・アングル(上から見下ろし/下から見上げ/やや斜め/完全な平行など、どの角度から撮っているか)の微妙な偏差に注視する。最終的には計九つの横たわる人物像を選択し、仰向け/うつぶせ/上半身と下半身のねじれ具合などの異なるものを隣り同士にする。
5. また、一番下の画像のみ、もともとは垂直に立ち両腕を後方に向けている人物像を、左回りに45度傾けて使用する。この操作によって、他の画像より背景が広くなり、下方に余白ができる。本来、もっとも加重がかかるはずの最下部の人物が浮遊して見えるため、視線の流れと連動していた上から下への力のベクトルが宙吊りになり、脱臼される効果が生じる。

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