Sunday, April 06, 2008

りんごと地球は互いに落下しあう その1

コンピュータ・アクションゲームの下手な人の操作の特徴は、いわゆる達人が魔法のような素早い手捌きで、しかし、淡々と作業をこなすようにゲームをクリアするのとは対照的だ。肩の力が入りすぎて上腕が硬直したままコントローラーのボタンを目一杯力を込めて押し、キャラクターの動きと連動して、いちいち本人の半身が大きく揺れたりする。大概そうした人は、ゲームオーバーする頃には、運動した後のように上着がびっしょりと汗で濡れていて、さらに極端な場合だと、長時間プレイした翌日などには筋肉痛になる者もあるらしい。いったい、この発汗ならびに筋肉痛という結果を、どのような原因に帰するべきなのか。彼は単にコントローラーを一定の間隔でいじっていただけでもないし、かといって、画面上のキャラクターの動作の模倣を通じて、それと同量の運動エネルギーを消費していたわけでもない。

暫定的な結論を示しておけば、「物理的」ということ(「実在性」)が知覚されるのは、視覚だとか聴覚だとかの感覚によるのではなく、つまり外部から観察するのではなくて、身体それ自身がその基準枠のなかに投入されたときフィードバックが起きて知覚される。それはテレビゲームのような、いわゆるインタラクティヴな仕掛けを使わなくても起こりうる(不安定な手持ちカメラの映像を長時間見続けていると、しばしば酔うことがあるといった例を想起しよう)。

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